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episode15:スターゲイザー[12]

  1. 康文「母の件で僕が学んだのは、過感知にとって必要なものは『絶対的な安心感』だということです。いまだに生態がわかっていない野生のISRPに対して、人為的な絶滅は不可能に近い。だけどISRPに対処してくれる確かな存在があるとわかっていれば、普段生活をする中で、安心感は格段に上がる」
  2. 康文「あの頃、お母さんには僕しかいなかった。僕は素人な上に子どもだった。僕は僕なりに一生懸命だったけど、結局甘えが出て、ああいう結果になった」孝弘「それは…」康文「大丈夫です。わかってます。遅かれ早かれ、あれはいつか起こることだった。そうじゃなくても、いつかお母さんは、頼れる存在がいない不安で、潰れてしまってたと思う」「過感知に必要なのは、安心して頼れる絶対的な存在。なのに現状のI.P.P.A.ときたら」
  3. 康文「取り逃しても気にしない。ISRPの出現から5分以上経ってても危機感というものがまるでない。ウチの支部だけじゃない。どこの支部も似たり寄ったり。ISRPの存在が過感知の心と体にどれだけ影響するか、全っっっ然わかってない!」「僕はその認識の甘さが許せない。I.P.P.A.を変えたいんです」孝弘「………」
  4. 康文「でも皆、今の楽な状況に慣れてしまって、わざわざ変えようなんて思わない。なにより、子どもの意見は通らない。だったらそれなりの立場になるしかない」孝弘「だったら進学した方が良くないか?高校3年、大学が最低4年。通ってる間に成人するし…」康文「そんな悠長な。いつお母さんの目が覚めるかもわからないのに」孝弘「………」康文「………リビングの写真」孝弘「え?」
  5. 康文「あれ、僕が撮ったんです。父さんもお母さんも、よく撮れてるって気に入ってくれて、もう何年もあそこに飾ってあるんですけど」「またあんなふうに、2人が一緒に不安なく暮らせたらいいなって思うんです」孝弘「ーーーー!」〈そうか。好きだった天体を手放して、両親を新たな希望にしたのか〉圭太「おかえりー」
  6. 圭太「?」孝弘「圭太さん、俺、正式にI.P.P.A.に入ろうと思います」〈体制を変えるなんて、きっとイバラの道だから。だから俺だけは味方でいようなんて、余計なお世話だって嫌な顔されそうだけど〉「(あとまあ、あのクソ低い貞操観念を叩き直さんと……)」〈時は流れ〉
  7. 〈7年もの間、眠ったままだった母親は、結局、目覚めることなく旅立ってしまったけれど〉孝弘「いつまでやってんだよ。平日に日を跨ぐなって言ったろ!」康文「あっ待って、これだけ…」孝弘「待ちません!」「翌日学校、さくっと退勤。明日に備えて早く寝るっ!」
  8. 康文「もっと思い切り仕事したい…」孝弘「休息も仕事のうちだぞ。片しとくから、もう行きな」康文「えっやだ。孝兄、雑だもん」孝弘「あぁ?」康文「あ、薫さーん」薫「御指名ありがとうございまーす」孝弘「おー待て待て。俺のどこが雑だって?」康文「じゃあ、あとよろしくお願いします」薫「はーい」あかね「おつかれさま〜」 ーepisode15:「スターゲイザー」fin.

11/9、今回は全8枚を一気にアップしました。これにて「episode15:スターゲイザー」全102ページで完結です。ご覧いただきありがとうございました。

「スターゲイザー(Stargazer)」は「星を見つめる人」という意味があります。ずばり康文のことです。
孝弘さん視点で進めているので描きませんでしたが、10代前半の未成年でありながら大人社会に加わったことで世間の暗部に巻き込まれたりもし、子どもらしさを意図せず失っていく中でも、その星の光は康文にとって、まさに「希望の星」だったのだろうと思います。
もし母親のことがなかったら…と考えることがあるけど、父親がISRPの(元)研究員、母親がISRP過感知体、そして自分がISRP非感知体で、いずれにせよ、この道を進んでいたんじゃないかなと思ったりします。まさに運命であり、使命。

暗いし、結構しんどい話だったので、無事に終えることができてほっとしています。
次のエピソードは、修学旅行後の武士と那津の話になります。
うまくいけば年末、たぶんうまくいかないと思うので、年明けからまたぼちぼち更新していこうと思います。またよろしくお願いします。

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